武田双雲

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みながうらやむような環境で働いているのに、すごく不満を持っている人がいる。文句を言う人はみんな一緒なんです。仕事がつまらない、給料が低い、上司が嫌だ。でも中には、給料の少ない中小企業であっても、「最高の会社だよ」と目をきらきらさせる人もいた。工場で泥だらけになりながら、夢をもって働いている人がいた。それでわかったんです。自分のとらえ方次第で、感情はいくらでも変えることができるんだって。何か楽しいことをするから楽しくなるんだと思ってしまう人、多いけど、でも、それは大きな勘違いなんです。楽しさは自分の中にある。だから、最初から楽しい気持ちで仕事をする。

 

僕は朝起きたときから、義務感をひとつひとつ打ち消す作業を続けています。「~しなければ」を「~したい」に切り替えるんです。たとえば、「顔を洗わなきゃ」なら、「どれだけ少ない水で洗えるか」とゲーム化する。「それができたら苦労はしないよ」と思われるかもしれません。たしかに最初は難しい。でも続けていると、少しずつできるようになります。

 

僕が最近意識しているのは、「義務感をいかに減らすか」ということです。人間のモチベーションが下がるのって、何かをやらされているときです。逆に、自主的に何かをやっているときは、自然と上がっているものです。ところが、僕らの日々の生活は義務感だらけです。たぶんそれが1日の中に何百もあるので、やる気が出ないのは当たり前なんです。

 

僕は、何を見ても感動できる「感動めがね」をかけているんです。だって、そのへんにあるガードレールを見ても感動できるんですから。「すげえな、事故で命を落とさないようにって言ってる」。コンビニなんて行ったら、もっとたいへんです。自動ドアが、速すぎず遅すぎず、かつストレスのない距離のところで開く。お店に入れば、靴についた土をなにげなく落としてくれるマットがおいてある。「おい誰だこれつくった奴!」みたいな。もう、めくるめく感動。

 

日本人はほとんどが、江戸時代の殿様よりも贅沢だ。なぜ身の回りにあるありがたさを忘れる

 

「得意なものなんてない」という人も多いと思います。でも、頼りないかもしれないけど、自分のいま持ち得るスキルと経験で、このチームを、このお客さんを喜ばすことができないかと考える。それが自分を成長させてくれる気がします。

 

人は、思い描いた通りの人生しか生きられません。人間の差はビジョンの差です。

 

お茶を飲むにも、美味しいお茶かどうかなんて関係ない。美味しそうに飲めば、美味しいんです。

 

新入社員時代はモチベーションが相当低かったですね。満員電車がとにかく苦手で、朝起きるだけでもつらくて……。それである日、「このままでは、あと40年ももたない。なんとかしなきゃ」と思ったんです。そして「このままじゃ悔しい。会社生活を絶対楽しんでやろう」と考えました。そう気持ちを切り替えて、自分なりにいろいろと工夫しはじめたら、会社生活がどんどん楽しくなっていったんです。

 

飛躍のきっかけになったのは、人と会ったとき、自分のすごさをアピールすることをやめたことです。自信がないと、認めてもらいたくてどうしても誇示しようとしてしまう。でもあるときから、「どうしたら、相手に喜んでもらえるか」だけを考えるように変えたんです。そうしたら、人がどんどん助けてくれるようになって、ものごとも上手くいくようになったんです。

 

多くの人は欲が中途半端なのだと思います。「自分のため」というエゴを突き詰めていくと、「人のため」になるんです。

 

どうすれば相手が喜ぶかということを突き詰めていくと、必然的に「自分の一番得意なことを提供しよう」というところに行き着くんです。恋愛でも、僕なら心を込めて筆で手紙を書こうとなる。そうやって自分の強みを知って活かせれば、相手にも喜んでもらえるから誇示する必要がなくなるんです。

 

僕は取材を受けるとき、言いたいことを言うんじゃなくて、この雑誌はどういった人が読んでいて、どんな話をしたら喜んでもらえるだろうか、ということをすごく考えます。僕の記事を読んで感動してもらうことと、個展で僕の作品を観て感動してもらうことは、まったく同じ価値があります。

 

もって生まれた才能や環境、経験、どこの国に生まれたか、そんなものは小さすぎて誤差にもならない。でも、ビジョンの差は無限です。

 

他人と比較しない人は強い。他人と比較しても明るくいられる人は、もっと強い。

 

書家として独立して数年は何をやっても上手くいかず、気持ちが落ちることもしばしばでした。だからこそ、モチベーションをどうすれば高く保てるんだろう、ということをずっと考えてきたおかげで、いまではかなり安定して高い状態を保てるようになっています。モチベーションというものはもともとの性格に関係なく、誰でもスキルを磨けば高く保てるようになるものです。

 

僕たちが当たり前に過ごしている日常が、すでにすごいんです。洋服を普通に選べる、食料がなくならない、水道が使える、電車が時間どおりに来る。これ全部、前の世代の人間の、汗と涙の結晶なわけですよね。そう考えたら、世の中につまらない場所なんてない。そんなすごい世界に生きていることのありがたさがわかったら、前の世代に恩返しをしたくなる。次の世代にもっといいものを残したくなる。

 

「どうしよう」と慌てるのではなく、「さて、どうしようか」とニヤリとするくらいがいい。

 

もちろん自分のすごさを誇示して成功している人もいます。でも、そういう人の周りに集まってくる人って、依存したい人ばかりです。だから、本人は頼られて相当しんどいはずです。一見成功してるように見えても、内面はボロボロという人も多いですし、なにより急激な環境変化にそういう人はすごく弱いのです。

 

幸せになりたかったら、幸せだなと思いながら生きていればいい。性格も実力も経験も関係なし。しかもタダ。幸せになるって、実は簡単なことなんですよ。